ラウルとティナ
生きていてはならないとされた存在がいた。
生きていては災いを呼ぶとされた存在がいた。
奴らはいずれこの世界を支配し絶対王政を為す。
奴らは異世界から、闇の魂を呼びつける。
生きることそのものを否定され、迫害され、惨殺され、
それでも望みをかけたものたちは、否定に心を覆い尽くされて生き延びてきた。
たった、2人の、生き残り。
か細い歌声。
歌声というより、読み歌。
導かれるかのように、生きていてはならないとされた彼は細く暗い道を進む。
君も、僕も、
生きていてはならないとされた存在。
2人の目があった瞬間、
2人が否定され続けた存在価値を守るために、
契約を結ぶのは容易いことだった。
あなたが死ぬときは、あなたが私を否定した証。
私が死ぬときは、私があなたを否定した証。
否定に溺れて生きてきた我々が、我々同士を否定しない限り、
我々は、生きていてはならない存在ではない。
これは、生命の存在を確認するための、命の契約。